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最高裁判所第二小法廷 昭和47年(オ)1028号 判決 1973年5月25日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人南健夫の上告理由について。

期間の定めのない土地の賃貸借においては、賃貸人は、民法六一七条に従い、いつでも解約の申入れをすることができ、この場合には、賃貸借は解約申入れののち一年を経過して終了するのであるが、農地法二〇条一項および五項は、農地の賃貸借の解約の申入れには都道府県知事の許可を受けることを要し、許可を受けないでした行為はその効力を生じない旨を規定し、同条二項は、許可をなしうる場合を定めている。右各規定によれば、農地の賃貸借の解約申入れについては、都道府県知事の許可を受けることが要件とされ、かつ、右許可を与えるについては、農地法二〇条二項各号所定の事由の存在することが必要とされるのであるが、それ以上に、右事由が解約権の発生ないし行使の実体的要件をなすものとして定められたものではないというべきである。したがつて、農地の賃貸借の契約申入れは、都道府県知事の有効な許可があれば、民法六一七条によりその効力を生ずるのであつて、賃貸借の解約による終了を主張する者は、許可があつたことを主張立証すれば足り、そのほかに、さらに農地法二〇条二項各号所定の事由の存在を主張立証する必要はないものと解するのが相当である。

原審の認定するところによれば、本件農地の賃貸借の解約申入れについては、農地法二〇条二項一号所定の賃借人が信義に反する行為をした場合にあたる事由があるとして愛媛県知事の許可がなされ、右許可処分はいまだ取り消されていないというのであり、右許可処分を当然に無効とすべき事由が存在することは主張立証されていない。したがつて、本件解約申入れを有効として被上告人の請求を認容した原判決に所論の違法はなく、論旨は、ひつきよう、結論に影響のない事項を主張して原判決を非難するものであつて、採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 大塚喜一郎 裁判官 村上朝一 裁判官 岡原昌男 裁判官 小川信雄)

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